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2023.11.28

事業承継のベストタイミングは?事業を飛躍させる第2創業のカンドコロ

事業承継とは、現経営者から後継者へ事業のバトンタッチを行うことですが、企業がこれまで培ってきたさまざまな財産(ヒト・モノ・カネ・知的資産)を上手に引き継ぎ、更なる成長・発展を目指すチャンスでもあります。今回は、事業承継における第2創業の重要性と留意点についてご紹介します。

目次

1.事業承継の最適なタイミングとは

図表1、図表2は2022年3月に改訂された中小企業庁『事業承継ガイドライン(第3版)』に掲載されているデータです。事業承継には明確な期限はありませんが、下記の図表1を見ると、従業員規模に関わらず、後継者として経営者に就任する年齢は、おおむね50歳前後であることがわかります。

しかし、図表2を見ると、「40代前半」で事業を承継した経営者において「ちょうどよい時期だった」と回答する割合が61%を占めるのに対して、50代以降だと「ちょうどよい時期だった」と回答する割合が41%と大きく低下し、「もっと早い方がよかった」と回答した人が28%という結果になっています。
このことから、実際に行われている事業承継の時期は、後継者にとって遅いと評価されている可能性があります。つまり、現経営者はなるべく早期に後継者を決定し、後継者候補へのアナウンスと本人の了解を明確に確認することが大切だと考えられます。

【図表1】従業員規模別にみた経営者交代による経営者年齢の変化

出典:中小企業庁『事業承継ガイドライン(第3版)』P.17から抜粋

【図表2】事業を引き継いだ年齢別にみた事業承継のタイミングの評価

出典:中小企業庁『事業承継ガイドライン(第3版)』P.17から抜粋

2.経営者交代は更なる成長・発展のチャンス

『事業承継ガイドライン(第3版)』によると、経営者の交代があった中小企業は、交代のなかった中小企業よりも売上高や利益の成長率が高いことが指摘されています。さらに、事業承継時の年齢が若いほど成長率が高い傾向にあることも報告されています。

これは、一般的に経営者年齢が若いほど試行錯誤(トライアンドエラー)を許容する組織・風土が醸成されやすいこと、新事業分野への進出を積極的に行う企業が多くなっていることも要因だと考えられます。

【図表3】経営者年齢別に見た、新事業分野への進出の状況

出典:中小企業庁『2022年版中小企業白書 第1部』 P.94から抜粋


【図表4】経営者年齢別に見た、試行錯誤(トライアンドエラー)を許容する組織風土の有無

出典:中小企業庁『2022年版中小企業白書 第1部』P.95から抜粋

3.第2創業と経営革新の定義

第2創業は定義も考え方もさまざまですが、「後継者が先代から事業を引き継いだ場合に、業態転換や新事業・新分野に進出すること」(平成26年度 「中小企業庁支援策のご案内 2.創業補助金(創業促進補助金)」)という定義が比較的わかりやすいと思います。

一方、中小企業等経営強化法による経営革新の定義は「事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること」となっており(法第2条第9項)、新事業活動とは、以下の5つの新たな取り組みを指しています(同条第7項)。

経営革新の定義>

①新商品の開発又は生産 

②新役務(サービス)の開発又は提供 

③商品の新たな生産又は販売の方式の導入 

④役務(サービス)の新たな提供の方式の導入 

⑤技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動 

つまり、第2創業は「事業を引き継いだ後継者が主体的に実施する経営革新」と捉えることができます。企業永続のためには、日々の売上げの確保や資金繰りに気をつけながら、明日の売上げや利益につながる活動も同時に行っていく必要があります。

後継者を中心に、本業を大切にしながら、未来の収穫のための土壌づくり、種まき、水やり活動を伴う「経営革新」にチャレンジすることをご検討ください。

4.第2創業の留意点とカンドコロ

業態転換や新事業・新分野の展開にはリスクがつきものです。第2創業のリスクを少しでも低減させるための考え方を2つご紹介します。

①第2創業に挑むタイミングを見極める

第2創業や経営革新に取り組むタイミングは、自社の本業が損益分岐点を超えている段階で実施することが望ましいと考えます。新事業に取り組む際は、結果が現れるまである程度の時間を要し、本業で生み出すキャッシュや他の経営資源を活用しながら新事業を育てることが求められます。そのため、本業で利益が出ている間に次の種まきを行うことが大切です。本業の衰退期や損益分岐点を下回っているときに一発逆転的な発想で新事業に取り組んでも、経営判断を間違えたり成果が出なかったりすることが往々にしてあるので注意が必要です。

②第2創業に挑む領域を見極める

「どうやるか」の前に「何をやるか」で成果の半分以上は決まります。本業と全くかけ離れた多角化戦略で成功する事例もありますが、リスク低減の観点からは「イチョウの葉戦略」での検討をおすすめします。

「イチョウの葉戦略」とは、本業で培った専門性、独自性、強みを軸としながら、顧客ターゲットや商材(商品・サービス)、商材の用途、販売経路、販売方法を分散展開する手法です。 中小企業の基本戦略である「一点突破」と、金融市場でよく使われる「ポートフォリオ」をあわせた考え方となります。

ちなみにイチョウ(銀杏)の花言葉は「長寿」。「イチョウの葉戦略」を基にした第2創業で持続的経営を目指しましょう。

【図表5】 「イチョウの葉戦略」(イメージ)

5.まとめ

事業承継対策のキーワードは「早め早めに、計画的に」。現経営者と後継者が力をあわせて早めに準備し、先の読めない不確実性が高まる時代においても果敢に新しい種まきに挑戦しつづけることで強靭な企業を創りあげていきましょう!

中小機構九州本部 中小企業アドバイザー
山元 理 氏(ヤマモト オサム)
宮崎県出身。実家が営む百貨店(創業65年)の3代目候補として経営実務を10年間経験したのち、中小企業診断士として独立。現在までの経営支援実績は2,280社以上。中小機構九州本部では商工団体や金融機関などの支援機関職員の事業承継支援能力アップや支援体制づくりをサポートしている。

※以下のオンラインセミナーにも登壇していますので、セミナー動画も合わせてご覧ください。

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