INTERVIEW

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1976年に現社長・新原弘二氏が創業し、畜舎用カーテン及び畜産資材の販売を開始した株式会社新原産業(宮崎県北諸県郡)は、畜舎建築の設計・施工、畜舎用カーテン加工、畜産設備資材や機器の製造、加工、輸入販売等、畜産農家のあらゆるニーズにきめ細かくトータルに対応した事業を展開。南九州にとどまらず、全国各地の顧客から支持されている会社を兄弟で承継した、新原祟弘さんと成道さんに、承継にあたって大切にしていることについて伺った。

目次

畜産農家のお悩みを解消したい・・・父が事業をスタート

−お父様が事業を始めたきっかけを教えてください。

父は若い頃、建築資材を取り扱う会社に勤務していました。南九州は畜産業が盛んな地であり、畜産農家も数多い。仕事をする中で、畜産農家には様々な悩み・ニーズがあることを知りました。

たとえば、熱中症予防のための畜舎(鶏小屋)細霧冷房システム。畜舎の環境は家畜の生育を大きく左右します。しかし、大手メーカーは、「畜舎」を作って終わり。当時、現場の細かなニーズをフォローするサービスは地元にはありませんでした。父はそこにビジネスチャンスを見いだし会社を設立したのです。

畜舎用細霧冷房システム以外にも、農家の方が補給しやすく、豚が食べやすいよう形状を工夫した「えさ箱」、快適な畜舎環境を作る「空調システム」、非常に手のかかる餌付け時の紙の取り替えが不要になる「ひよこロール」など。父は農家の方のお悩みに徹底的に耳を傾け、困ったことを解消するためにとことん知恵を絞っていました。そのアイデアは後に多くの知的財産を取得しています。

手がけた畜舎(外観)
取得した知的財産の数々
−おふたりは以前から継ぐことは考えていたのですか。

父の農家の方への思いが強すぎて、無茶な注文を取ってきて製造現場や経理と揉めたこともありましたね。特に母(副社長)とはケンカもたくさんしていたし、時には火花が散ることも(笑)。

でも、しばらく時間が経つと不思議と仲直り(笑)。細かいことを気にせず後ろを振り返らない父、胆力があって少々のことでは動じない母。何より、「何とか困っている地域の農家さんの力になりたい!」という思いがありました。

その姿勢は二人とも、どんな時も揺らぐことはなかったと思います。幼い頃からそんな両親の姿を見ている私たち兄弟が高校卒業後、家業を継ぐべく会社に入るのは必然でした。

「承継」を意識しながら進める社内改革

−承継されてからの取り組みについて教えてください。

父や母の苦労や活躍をずっとそばで見てきました。両親の「思い」も「事業」もきちんと承継して新しい体制を築いていきたい。父が本当はやりたかったけどできなかったこと、私たちが今できることは何だろう?と、ずっと考えていました。

地域に育まれ、父は一代でこの会社を築き上げました。いわゆるワンマン経営者でもあります。父の行動力・突破力が無ければ、弊社の今はありません。しかし従業員も50名近くになり、経営者一人だけが推進役を担う、経営者の一言で何でも決まるというのは、会社の将来を考えると少し違うのかなとも感じます。当たり前ですが、私たち兄弟は、父とは性格も資質も異なるのです。

そこで私たちは今、社内体制の改革を手がけています。目指しているのは「ワンチーム。社員一丸となった組織」です。

−具体的には、どのように改革に取り組んでいるのですか。

現在、九州経済産業局のアドバイスや、中小企業基盤整備機構九州本部の「ハンズオン支援事業」を活用して、自社のノウハウの明確化、業務の標準化、時代に合った多様なニーズに対応できる開発体制づくりなど、社員一人一人が自ら考え、自ら行動する組織になるための議論を多くの社員が参加してやっています。

皆が口を揃えて言うのは「新原産業をより良くしていきたい」という思い。議論の中で、社員の意外な個性、能力、魅力に気づかされたのも大きな発見であり喜びです。社員が自発的に、前向きに、活き活きと会社の将来と地域の将来を語っているのを見るのって本当に嬉しいことなんですよね。

「仕事の見える化」。これまで意外にシンプルなことができていなかったと気づかされることも多いです。体制づくりに時間と手間はかかるけれど、社員一丸となって取り組んでいきます。

将来の夢は「二人で一つ、二人は一つ」

−兄弟で承継したからこそ意識していることはありますか。

社長である父からは「創意工夫の芽を育て続けること」、「お客様のニーズに耳を傾け続けること」、「従業員を大切にしながら、仕事の楽しさ、厳しさを共有し、やりがいのある会社に」との言葉をもらっています。副社長の母からは「専務(長男)は、自分にも他人にも優しい。常務(次男)は、自分にも他人にも厳しい。性格はあべこべだけど、それがいいところ。あなたたちは二人で一つなの。どちらかが欠けてもダメ。ずっと二人で協力してがんばりなさいね」。

父と母、どちらかが欠けても、この会社の今は無かったと思います。私たちに向けられた言葉はそのまま父と母に向けられた言葉でもあると感じています。父からは、「体制構築を新しくした後は、社訓を今の時代に合わせて新しく作り直したら」と言われています。でも、私は変えたくないんですよ。じっくり考えた結果、やっぱり変えたくないんです。いつの時代でも通じる新原産業らしい立派な社訓だと思っています。父は仕事を通じて喜びの中、夢の中にいたんだと思います。

私たちの夢も、社員に仕事を通じて喜びを感じてもらうこと、そして地域とともに成長することです。

社訓

一、 お客様に使いこなしてもらえる仕事と努力 それは喜び

一、 大いなる夢、発想の転換の繰り返し それは喜び

一、 あく事なき意欲、行動 それは喜び

一、 遅遅として、進まぬ計画障害に不屈の闘志で耐えて練る それは喜び

一、 意見を戦わせ、力を合わせる それは喜び

一、 一つづつ積み上げる一つづつの大きな結果 それは喜び

株式会社 新原産業

代表取締役 新原弘二

継ぐモノへのメッセージ

−最後に、事業承継を検討している方にメッセージをお願いします。

立場や役割が自分たちを成長させてくれています。見えてくる光景が変わってきます。社員が活き活き働いている光景を見るのが、今私たちの喜びなのです。一緒に地域を盛り上げていきましょう。

(取材・編集:2021年12月、記事再編:2023年)

株式会社新原産業
専務取締役 新原 祟弘 氏(右)・常務取締役 新原 成道 氏(左)
祟弘氏
1980年生まれ。地元の高校を卒業後、1998年に入社。入社後、各部門を経て主に営業を担当。現在は専務取締役に加え、2004年に開設した東日本営業所で営業を担当しており、社内外で新原産業の屋台骨を支えている。

成通氏
1981年生まれ。地元の高校卒業後、2006年に入社。入社後、各部門を経て主に営業を担当。現在は常務取締役として、本社で主に営業担当をしながら、社長、副社長を近くでサポートしている。
会社概要
株式会社新原産業
宮崎県北諸県郡三股町蓼池4450
http://www.niihara.co.jp/
畜舎建築の設計・施工、畜舎用カーテン加工、畜産設備資材、
機器等の製造、加工、輸入販売および施工 等