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2024.03.01

新たな地方創生の手法として注目を集める「継業」とは?

経営資産をただ引き渡すだけでなく、弟子やインターンなど多様な承継の機会を提案する「継業」。少子高齢化により後継者不足に直面している地域で、望まない廃業を救うことができる「継業」は、地域の魅力を残す「新しい地方創生」として期待を集めています。「継業」がいま注目される理由や、具体的な取り組みについて紹介します。

目次

「継業」とは、新しい地方創生のかたち

後継者の不在により地域の魅力ある小規模事業者が廃業することは、私たちが暮らすまちの魅力が減退することにもつながります。それに待ったをかけるのが、多様な承継機会を提案する「継業」です。

「継業」とは、地域の魅力ある小規模事業を、親族や従業員ではなく、接点のない第三者に継いでもらうことで、地域の仕事を承継していくことです。

従来は、事業を親族に引き継ぐ「親族内承継」や、従業員に引き継ぐ「従業員承継」などが一般的でしたが、「継業」では民間企業が運営するマッチングサービスを利用したり、事業承継・引継ぎ支援センターなどを通じて出会った第三者に地域の生業を引き継ぐことができます。

手数料の高い事業が優先的に取り引きされる「M&A」とは異なり、「継業」では小規模事業者をはじめ、価値化するのが難しい伝統産業、地域の特産品を生み出す地場産業などに寄り添い、事業や資産の承継だけではなく、技術や味、文化などの多様な地域資源の承継の機会を提供します。

後継者不足の課題が手付かずのまま望まない廃業を迎えてしまう事業者を掘り起こし、地域ぐるみでまちに必要な生業や文化を残していく活動が「継業」なのです。

多様な継ぎ方を提案する「継業」

近年では「継業」に関する多様なニーズに合わせて、後継者不在の事業者、地域の仕事を探している移住希望者、地域の魅力を守りたい自治体の三者をつなぐプラットフォームを提供する会社が増え、幅広い業種で後継ぎが募集されており、様々なかたちで経営資源を引き継ぐことができます。

中でも多い業種が、地域で長年親しまれてきた飲食店や宿泊施設です。そのほか、高齢化に比例して後継者不足が深刻な漁業や林業、畜産業、伝統産業など、多様な業種で後継ぎの募集が行われています。

経営資源を引き継ぐ際は、設備から経営方針、秘伝のレシピまで丸ごと有償で譲渡する場合もあれば、居抜き物件として屋号だけを引き継ぐ場合や、弟子を募って時間をかけて技術を伝授する場合など様々です。

事業者の意向によって募集内容が異なるため、コミュニケーションをとりながらお互いの要望がマッチする事業承継を行います。

三方良し!「継業」のメリット

事業者は、「継業」によって幅広い選択肢の中から残したい生業・文化にあった「継ぎ方」を見つけることができます。また、「親族内」・「従業員」だけでなく、外部に後継ぎの候補者を広げることで理想に近い後継ぎを見つけることが可能です。

後継ぎにとってのメリットは、これまで培われた地域ならではの仕事や専門技術を引き継ぐことができる点です。すでにある経営基盤をもとに新しいアイデアを考え、後継ぎの色をプラスしながら事業を続けることができます。

地域にとっても、長く愛されてきた小規模事業者や日本でひとりしかいない伝統技術の灯火を守り続けることは、豊かな地域資源を残すことに繋がります。

また、高齢化率が高く後継者不足が深刻な地域に、新しい人を呼び込み、移住者の仕事を確保できるという点でも「継業」は地域活性化に一役買っています。

「継業」は地方創生のひとつの手段であり、事業者・後継ぎ・地域の三者にメリットがある「三方良し」の取り組みといえるでしょう。

また、移住先で新しいことに挑戦したいという人や、コスト面を含めイチから起業するにはハードルが高いと考える人の背中を押す、新しいキャリア形成手法の一つとしても注目を集めています。

「継業」を始めたい人に向けて

「これまで続いてきた店を地域ぐるみで守りたい」「地域の魅力を残すために継業を始めてみたい」という人は、自分の要望にあったサポート機関に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

​​事業承継・引継ぎ支援センター(後継者人材バンク)
日本政策金融公庫
二ホン継業バンク
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「継業」で事業を引き継いでほしい場合は

最近は、地方創生の一環として「継業」に取り組む自治体も徐々に増えています。経営者の高齢化と後継者不在による廃業が増えることが予想される2025年が迫る中、地方創生に取り組む自治体にとって「継業」の重要性は増していくのかもしれません。

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