高齢化により2025年には127万社もの中⼩事業者が廃業するといわれる日本の後継者不足。長年受け継がれてきた経営資源を絶やさないため、事業承継を金銭面からサポートする補助金制度が「事業承継・引継ぎ補助金」です。今回は、事業承継・引継ぎ補助金の3種類の概要と、申請から交付までの流れについて紹介します。
事業承継・引継ぎ補助金とは
「事業承継・引継ぎ補助金」とは、中小企業者・個人事業主の事業承継を支援する補助金のことです。事業承継を契機とした新たな取り組みなどの経費の一部を補助することで事業の承継や再編、統合を促進し、経済の活性化を目的としています。1年間で数回に渡り公募が行われ、2024年1月9日からは第8次の募集が始まっています。(2024年2月16日金曜日17時締切予定)
3つの補助金
「事業承継・引継ぎ補助金」は、補助の対象となる取組内容や経費の種類に応じて「経営革新枠」「専門家活用枠」「廃業・再チャレンジ枠」の3つに分かれており、条件に応じて最大800万円、最大補助率2/3が補助されます。
1.経営革新枠
経営革新枠は、他事業者が保有する経営資源を引き継いで創業した「創業支援類型(I型)」、親族内承継・従業員承継により経営資源を引き継いだ「経営者交代類型(II型)」、M&Aにより経営資源を引き継いだ「M&A類型(Ⅲ型)」の3種類があります。事業を引き継いだ後に「新規事業や新商品開発に取り組みたい」「販路拡大のため新規顧客の開拓に着手したい」といったようにやりたいことはあるものの、経済的な理由でアイデアをかたちにするのが難しいと悩んでいるひとを後押しする制度です。
<支援内容>
・補助率:2分の1または3分の2以内
・補助上限:600万円または800万円 ※一定の賃上げを実施する場合、補助上限を800万円に引き上げ
・補助対象例:店舗・事務所の改築工事費、設備投資費など
2.専門家活用枠
専門家活用枠は、M&Aを行う際、専門家活用にかかる費用を補助します。経営資源を譲り受ける「買い手支援類型(I型)」と、譲り渡す「売り手支援類型(II型)」の2つに分類されます。M&Aの成約において、制度が複雑だったり専門的知識が必要となる場面が多く、思った以上にストレスがかかってしまう場合も少なくありません。その道のプロである専門家に頼りやすい制度があるというのは、M&Aの準備を進めるひとにとって心強い味方といえるでしょう。
<支援内容>
・補助率:2分の1または3分の2以内
・補助上限:600万円 ※補助対象事業において補助対象期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合は300万円
・補助対象例:ファイナンシャルアドバイザーまたはM&A仲介費用、セカンドオピニオン費用、表明保証保険料など
3.廃業・再チャレンジ枠
廃業・再チャレンジ枠とは、事業承継やM&Aに伴い既存の事業や譲り受けた事業の一部を廃業する場合にかかる費用を補助するものです。事業承継やM&Aで譲り渡せず、廃業をして新しい事業に再チャレンジする場合も対象となります。廃業とは、経営者が事業を自主的にやめることを指しますが、負債をなるべく残さない前向きな廃業をすることで、次のステップに進みやすく、新しい事業に挑戦しやすくなります。
<支援内容>
・補助率:3分の2以内
※経営革新枠、専門家活用枠のどちらかと併用可能。併用申請する場合は各枠の補助率に従う。
・補助上限:150万円
・補助対象例:廃業支援費、在庫廃棄費、解体費など
各種支援内容・関連資料はこちらを参照ください。
事業承継・引継ぎ補助金交付までの流れ
事業承継・引継ぎ補助金の交付を受けるには、下記のように事前準備、交付申請、事業実施、事業完了後、補助金交付後のステップで手続きをします。
交付申請は、経済産業省が運営する補助金の電子申請システム「jGrants(Jグランツ)」で行うため、「gBizIDプライム」アカウントの発行が必要となります。アカウントの発行は3週間程度かかる場合があるため、公募締め切りまでに余裕を持って登録しておくのがおすすめです。
まずは自分の事業がどの類型に該当するかを確認し、認定経営革新等支援機関へ相談するなど、補助金への理解を深めることからはじめましょう。
<補助金交付までのステップ>
1.補助対象となる事業を確認する
2.認定経営革新等支援機関へ相談する
3.gBizIDプライムアカウントの取得
4.jGrantsでの交付申請
5.交付決定通知
6.補助対象事業の実施・実績報告
7.補助金交付
8.後年報告
※補助金は、すべての申請者が採択されるわけではありません。不採択となり、補助を受けられないこともあります。
参考:事業承継・引継ぎ補助金事務局