北は北海道から南は沖縄まで、全国に設置されている「事業承継・引継ぎ支援センター」。「親族に後継者がいないので第三者に譲ることを検討している」「親族や従業員への承継を円滑に行いたい」「事業承継を行いたいけど何から始めたらいいかわからない」など、中小企業の事業承継に関するあらゆる相談を受け付けています。今回は、そんな事業承継・引継ぎ支援センターの支援内容について詳しく紹介します。
「事業承継・引継ぎ支援センター」 とは
事業承継・引継ぎ支援センターとは、継ぐひと・譲るひとの両者が無料で事業承継の相談をすることができる公的相談窓口です。2021年4月に親族内承継支援を行っていた「事業承継ネットワーク」と、第三者承継支援を行っていた「事業引継ぎ支援センター」が1つに統合され、事業承継に関するさまざまな支援をワンストップで行う事業承継・引継ぎ支援センターとして47都道府県に設置されました。
「事業承継・引継ぎ支援センター」 の支援内容
事業承継・引継ぎ支援センターでは主に、親族以外への事業引継ぎを支援する「第三者承継支援」、親族への事業承継をスムーズに行うための「親族内承継支援」、新しく事業を始めたい人と後継者不在の事業者をつなぐ「後継者人材バンク」などの支援を行っています。
1. 第三者承継に関する支援
親族以外に事業を引き継ぐ第三者承継への支援では、中小企業診断士、金融機関OB、税理士、公認会計士など、専門知識をもった事業承継のプロが相談に応じてアドバイスを行います。最近では第三者に事業を譲る考えが広がっており、事業承継・引継ぎ支援センターへの問い合わせ件数は年々増加傾向に。2013年から2021年までの累計相談件数は8万件以上、事業引継ぎ件数は累計約6,500件にのぼり、相談・引継ぎ件数の豊富さも信頼できるポイントです。
参照:事業承継・引継ぎポータルサイト「第三者承継支援」
2. 親族内承継に関する支援
親族に事業を引き継ぐ場合は、相談を受けた承継コーディネーターが課題を整理し、最適なタイミングで事業承継が行えるようサポートします。事業承継に向けた準備を計画的に進めてもらえるよう税理士や中小企業診断士等の外部専門家と連携し「事業承継計画」を策定するなど、様々な支援を受けることができます。いま自分が置かれている状況を客観的に整理し、これからやるべきことを明確にすることで親族内承継をスムーズに行うことができます。
参照:事業承継・引継ぎポータルサイト「親族内承継支援」
3. 後継者人材バンク
後継者人材バンク事業では、第三者承継を希望する後継者不在の事業者と起業を志す人材のマッチングを行い、成約までを支援します。後継者不在の事業者にとっては、意欲のある後継者に事業を引き継ぐことができ、従業員の雇用も維持することができます。起業家にとっては、顧客や仕入れ先、店舗等の経営資源を引き継ぐことができ、起業のリスク、コストを低減させることができます。事業承継・引継ぎ支援センターでは全国の情報共有が行われているため、遠隔地間でのマッチングも可能です。詳細は下記ポータルサイトをご覧ください。創業希望者が第三者承継する場合などのメリット・デメリットも記載しています。
参照:事業承継・引継ぎポータルサイト 「後継者人材バンク」
「事業承継・引継ぎ支援センター」 を使った承継事例
1.地元から愛される音楽スタジオ「BE BOP」を第三者承継
福岡県で最大規模の音楽スタジオとして知られる有限会社BE BOP(福岡県粕屋郡)を、かつての利用者でIT会社を営む福田剛さんが引き継ぎました。福岡県事業承継・引継ぎ支援センターのサブマネージャーがヒアリングを担当。M&Aプラットフォームの利用や提携先などを通じて後継候補者を幅広く探し、最終的に「このままの形態で引き継いでほしい」という事業者の思いを叶えるマッチングが成功しました。
URL:https://shoukei9.smrj.go.jp/892/
2.「手打ちうどん 拓どん」の歴史と未来を託す従業員承継
長崎県にある創業40年の「手打ちうどん拓どん」では、後継ぎ候補者の中原潤さんに対し1年間の指導を行った後に事業譲渡しました。歴史が詰まった味や店の佇まいをそのまま継いでくれる後継ぎを探していたとき、長年の常連客から中原さんを紹介され、お店の未来を託すことに。長崎県事業承継・引継ぎ支援センターでは契約条件等の内容をまとめた「事業譲渡契約書」の作成から調印まで、事例を踏まえた具体的な支援を行いました。
URL:https://shoukei9.smrj.go.jp/974/
「事業承継・引継ぎ支援センター」 の問い合わせ方法
事業承継・引継ぎ支援センターの利用は予約制です。電話、Webフォーム、FAXなど各センターの問い合わせ先から予約を申し込み、日程調整を行います。日程が確定したら、必要書類を持参して面談に臨みましょう。また、資料請求の対応や、簡易的なWeb事業承継診断を行っているセンターもあり、事前に事業承継について情報収集をするのにおすすめです。詳細は各センターのWebサイトをご確認ください。
事業承継・引継ぎポータルサイト